デンマークのフォルケホイスコーレとは
フォルケホイスコーレ(国民高等学校)は、デンマーク人の若者が通っている宿泊施設を持っている学校です。北欧独特の成人教育機関です。人間教育も兼ねた寄宿制の学校です。1つの学校で、写真や音楽、演劇、国際政治、カヌー、陶芸など様々なことを広く学ぶことができます。また、学校ごとに特徴があり、芸術や体操・スポーツ、手芸、国際性に力を入れている学校など様々な特色を持っています。
フォルケホイスコーレは、北欧の歴史と文化を背景に生まれ、しっかりとした教育理念に裏打ちされているものであり、北欧の教育文化として根付いています。
フォルケホイスコーレの特徴
- 入学資格:原則として17歳半以上であること(学校によっては18歳)
- 入学試験:試験はありません。外国人の場合、学校によっては比較的高いレベルの英語力もしくはデンマーク語の能力が求められます。
- 成績表:ありません。
- 修了証・卒業証書:原則、修了証・卒業証書や資格はありません。
- 寄宿生活 滞在中は他の生徒と寝起きを共にし、教師も同じ敷地内に住まっていることが多いです。
- 科目:人文科学系、芸術・デザイン、体育スポーツを中心として、さまざまなことを学ぶことができます。
- 学習期間:8~24週のコースが多いです。
フォルケホイスコーレとN.F.S.グルンドヴィ
フォルケホイスコーレというコンセプトを提唱したのは デンマーク国民の父と呼ばれるN. F. S.グルンドヴィです。
彼は当時の硬直した暗記中心の教育を批判し、生徒と教師が寝起きをともにしながら(寄宿制)「生きた言葉」で語り合い響き合うような対話を重ねて、自分たちをとりまく世界を学ぼう、と訴えました。そして公教育からは独立した学校の設立を提唱したのです。
そのコンセプトから生まれたのがフォルケホイスコーレでした。現在あるフォルケホイスコーレ各校はそれぞれ独自の主旨で設立されてはいますが、底流にはグルンドヴィのコンセプト「人間同士の対話による相互の人格形成」があります。
カリキュラムも大事なのですが、フォルケホイスコーレで学ぶときに一番重要なことは、そこで出会う人々と対話を繰り返すことなのです。
グルンドヴィの教育理念
ホイスコーレに対する彼の理念はデンマーク民主主義社会をつくる基礎ともなりました。それまでの学校は、ラテン、フランス、ギリシャ、ドイツなどの外国語や外国文化が重視され、暗記教育がほとんどでした。一部の上流階級の人たちだけが高等教育を受けられ、母国語しか話せない農民の文化は低いものとみなされていました。グルンドヴィはそれを強く批判し、抵抗しました。親から子へと代々伝えられてきた母国語と、そこからうまれてきた地域文化こそが尊く、美しいのだと訴えたのです。それは「生きた言葉」による対話と、競争でない共生からなる生活をもとめた教育理念でもありました。
(中村秀峰:婦人の友2000年5月号「北欧のソング・ブック」より)